金口裕也(かなくちゆうや)
ある時、経営者から『●●に進出するから、●●人を雇っていつか現地の責任者にしよう』と話しが降ってくるという話を聞きます。実際当社でもこのような事がありました。『え、経験もないのに外国人採用ってどうすればいいの??』と悩む人事担当者も多いと思います。そんな時にどのような考えを持って、どのように動くべきなのか少しご紹介します。
この考え方を固めてやればおのずと道は開けてくると思います。
どこで?・・・・・・どの国をビジネスのターゲットにしているか?
なにを?・・・・どの様なビジネスをするのか?
いつ?・・・・・いつビジネスを開始するのか?
どの様に?・・・外国籍従業員をどの様に活用するか?
外国人採用で大事な事・・・理解して理解される
どの国でビジネスを行うか?によって採用の方法が変わります。例えば中国でビジネスを行うのであれば、国内で採用活動すれば事が足ります。なぜなら日本には多くの中国人留学生がいます。以下は、文部科学省の資料ですが、中国人留学生はかなりの数がいます。ベトナムも多いです。
台湾以下はそもそもの留学生数が少ないので、国内で採用活動してもなかなか集まらない傾向が強くなってきます。当社は現地のタイ人の人材紹介を行っておりますが、進出企業数に対してタイ人は留学生が少ないので、売り手市場の傾向が強いため、売り手市場ではない現地から優秀な人材を紹介するというスキームを取っています。
ちなみに当社が中国に海外進出をする前に東京で「中国でマンション建設をやります」と打ち出して説明会を実施したところ、1回の説明会で77名の参加があり、そのうち98%が中国籍の方でした。募集の背景を全面的に出して、説明会を行うのも狙いを絞って効果的に採用活動を行うポイントです。
採用した後にモチベーションを持続させるには、どの様なビジネスをするのか?をしっかりとした事業のビジョンを本人に示し続けることが大切です。我々の中国ビジネスのスタートは2009年に上海で設計事務所を開設しました。その後2012年にマンション開発をスタート。
ただ、2005年に入社した現在の中国の社長は、2005年からの数年間は用地取得の見込みもなく、4年の間は日本のマンションに備え付けるカーテンの中国工場開拓や関連会社の資材の調達をしていました。彼が言うには「本望ではなかったが、必ず中国でマンション開発を行う」というマリモの明確なビジョンがあったからこそ、諦めなかったそうです。なにを行うのかしっかりビジョンを示し続けたからこそ、持続した結果です。
採用は現地がビジネスを始めてからでは遅い場合があります。いつビジネスを開始するのか?人事の方はある程度その海外事業の事業計画を読み込み、逆算していつ入社させれば良いのかを計算して採用活動をスタートさせる必要性があります。
これは当社の事例ですが、インドネシアでのサービスアパートメント事業が正式に決まったのは2013年。既に用地取得は済ませていたので、我々人事メンバーは先を見て2012年から採用活動を開始していました。2013年に採用したインドネシア人を日本での会社馴染ませ、6ヶ月間現地でのオープン準備に携わらせました。半年~1年、当社の考え方に馴染ませてから準備に携わった為、現地の日本人赴任者も非常に助かったとの事です。
事業の本格稼働から逆算して動く事が非常に大事だという事が身を持って経験できました。
採用した現地国籍の方にどのようになって欲しいのか具体的に伝えることが必要です。私の知っているインドネシア人は現在渋谷の大手アパレルのショップで働いていますが、その卓越した語学力を活かして、このショップでTOPの売り上げを誇っています。このショップは入社時に彼に将来の店長を目指すようにハッキリと伝えていたそうです。2年で副店長まで昇進し、現在は店長を目指してTOPを独走中です。逆に将来のビジョンを持たさないと、すぐに辞めてしまう事もよく聞きます。
外国人採用活動において、理解して、理解される事が大事だと思っています。まず、担当者がその国の事を理解しているかどうかで、応募者の共感度がまるで違う事を体験してきました。会社説明会で延々と自社の理解を促すこと以前に、採用担当者がその国の事をどのくらい理解しているかで優秀層を引き寄せることが出来ます。
私は以前、全く海外に興味がなく、まして行くことさえも考えておりませんでした。そんな中、外国人採用活動をスタートさせましたが、2011年に初めて中国に現地視察に行った際に、意識がまるで変わりました。人事担当者がその国を理解出来れば、採用の際も応募者に対しての訴求力が違いその後、制度や仕組みを作るのにも観点が全く違います。私は部門の採用担当者に必ずその国を見させてから採用活動をスタートさせるようにしています。
因みに私はある程度中国語が話せるようになり、中国人の採用については現地語を交えると共感度が倍増することがわかっています。そこまでにないにしろ『ニーハオ、シェイシェイ、チンドゥオグアンジャオ』ぐらい覚えておけば、ぐっと心を引き寄せることができます。相手を理解して、理解される事が大事だと思います。
上海ガニは現地では上海ガニとは言いません。ダージャーシエと言えば中国人は『おお!』となってくれます。
執筆者: 金口裕也(かなくち ゆうや)
株式会社マリモホールディングス 国際人事部 部長