コラム【従業員のグローバル化意識醸成への工夫】

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従業員のグローバル化意識醸成への工夫

 金口裕也(かなくちゆうや)


 

海外進出している企業の人事にとって進出時に日本人の誰を赴任させるかは悩みの種でもあります。『社内募集すれば誰か手を挙げるだろう』と思って社内募集すると、赴任国によっては誰も手を挙げない、仕事目的ではなく海外赴任そのものが目的な人が手を挙げたり、場合によってはその人がいないと部門がまわらない人が手を挙げたりと様々な事が起こります。当社で実際に起こった事例をここでは紹介します。

 

一番辛いのは誰も手を挙げない事

前述に示した中で、『仕事目的ではなく海外赴任そのものが目的な人が手を挙げる』、『その人がいないと部門がまわらない人が手を挙げる』については、何らかの理由を考えて本人を説得すれば回避できます。そのようなケースの場合は複数人が手を挙げている状況が殆どです。最も辛いのは『社内募集の締め切りになっても誰も応募がありません』と部下からの報告。誰も手を挙げない状況では、対象者を社内から探して、声をかけても嫌がられる状況が待っています。無理やり赴任させてもモチベーションが上がらず、後々には『帰国させてほしい』となれば、また一から探さなければなりません。そのような状況を事前に回避するために、当社ではこんな工夫をしています。

 

 

社内表彰を海外視察に

以前当社では毎年行っている社内表彰を金一封で済ませていました。ある年に中国でのマンション開発が決まり、いよいよ日本人社員の誰を赴任させるかという段階で、一旦社内募集を行いましたが応募者はゼロ。対象者を絞り個別面談で説得に入りますが、当時はもの空気汚染の報道がひどく、また中国人観光客のマナーの悪さがワイドショーで連日報道されるなど、中国のイメージは最悪でした。無論、社員は行ったこともないので、報道のすべてが真実で、良いところなど頭をよぎるはずもありません。対して、他社の赴任者の方と話す機会があり『来る前は嫌だったけど、来たら中国には中国の良さがあって、今では日本に帰任したくないよ。その人たちは知らないから嫌がる。その気持ちはわかりますよ』と言われていました。

 

ここで、アイデアが浮かび、社内表彰の副賞の金一封を海外事業の視察に置き換えを経営陣に提案しました。コストも金一封とだいたい同じなので、すんなり案は通り、その年から海外事業の視察を実施しました。

 

 

社内表彰副賞

 

 

思わぬ副産物も

社内表彰の副賞で、短期間の海外なので殆どの方が前向きに参加します。この『前向き』が大切です。前向きな目で見れば、その国の本当の姿が変なフィルターなしに見えてきます。マイナスイメージの強い国ほど、効果は絶大です。この視察は4泊5日ですが、すべて事業視察ではなく、観光も半分ほど組み、その国の文化や現地人との触れ合いの場面を作ります。要は『へ~こんな感じだったら赴任してもいいかな』と思わせることが大事です。当社はこれをきっかけに前向きに赴任した人が複数人出ました。

 

中国視察風景

 

実は思わぬ副産物があります。今、赴任している人たちへのモチベーションの向上が非常に大きいです。日本からは、お偉いさんしか来ないので、一般社員の日本人が来ればそれはそれは喜びます。また自分たちの事業を説明することで、自分たちの事業への誇りが強くなり、『見てもらったからには成功せねば』という気持ちが仕事に現われてきます。行く方、迎える方両方にメリットがあります。

 

 

いきなり赴任ではなく、一回視察を

ただ、全員が全員社内表彰を受けた人が赴任対象となることはありません。急に現地から『こういった人物を赴任させてほしい』というケースが多いです。こういったケースについてもワンクッション置く事でスムーズになります。『一度視察して決めたらいい』と対象者に薦めるのです。こうすれば、やはり一度は自分の会社の海外事業を見てみたいという願望から、見に行く確率は高く、社内表彰のケースと同じようにすれば、赴任してくれる確率は高まります。

 

中国事業見学

 

 

このように少々手間はかかりますが、全く赴任する人がいない!なので強制的に!という場面が回避できます。無理やりやってしまうと、うまくいかなかったら赴任者本人からも、現地からも、人材を輩出した部署からも『人事が悪い!』と四方八方から烙印を押されてしまいますので。

 

中国観光

 

 

 

 

執筆者: 金口裕也(かなくち ゆうや)

株式会社マリモホールディングス 国際人事部 部長

 

 

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