金口裕也(かなくちゆうや)
採用活動費を抑えることは人事にとって大きな課題です。しかし忘れてはならないのは採用できたかどうかという最終成果こそが一番大事なことです。費用ばかり気にしていて、結果的に採用できなかったら、社内に迷惑をかけたり、採用に携わる担当者のモチベーションは下がるばかり。おまけに採用市場をあまり知らない、部門や経営陣からは『採用なんて簡単だろ、本当に動いているのか?』と追い立てられる状況が待っています。採用の時間が遅れればもしかすると、事業の機会損失を招く事もありますので、今回は採用に費やす無駄な時間にスポットを当ててみました。
1人当たりの採用コストはこのくらいです。と報告する際に、見えないコストは報告できません。要は採用開始から、入社までにかかった期間はどのくらいなのかも大きく変わってきます。
仮に、1人の技術者を月給30万で採用するとしましょう。
A担当は、人材紹介会社を使い、1カ月で採用に成功しました。人材紹介会社に支払ったお成功報酬は約160万円です。
B担当は、ナビサイトに3カ月掲載し、掲載料は100万円でした。結局5カ月かかってしまいしましたが費用は抑えることが出来ました。
一見すると、Aさんは多くの費用をかけ短い期間で採用しているから楽をしているようで、Bさんは何とかコストを抑え、自らの採用活動で採用を決めた為、Bさんの評価をしがちです。
ここで、予想できる目に見えないコストを見てみましょう。
この技術者がいない為に設計業務を外注にお願いした場合、仮に月額60万かかってしまえば、1カ月ごとに余分な費用が従業員を雇うより30万かかるなら、4か月分余分にかかり、その合計は120万になります。気を付けなければならないのはこの費用は通常採用活動費とは見られないところです。またこのB担当者は、ナビの操作や、応募者とのやり取りを少なからずAさんより4か月も余分に行っていると想定できます。4か月のうち、この採用に費やした時間が2週間であれば、20万円ぐらい人件費をかけていると仮定します。
A担当 →成功報酬160万
B担当 →ナビサイト費用100万、Aより余分にかかった外注費120万、Aより余分にかかった人件費20万
結局B担当の方がA担当より80万も余分にコストをかけている計算になります。
費用をかけて成果の結果や時間を短縮する事の大切さがよくわかります。実はB担当はコストもかけ、無駄な時間も使っている。これは評価できるでしょうか?見えないコストも考えなければ良い採用が出来たとは言えません。
採用活動をしていると応募者から『土日であれば面接可能です。もし無理なら有給休暇を取得しますが、2週間後になります。』よくこんな事があります。これをどう考えるかです。
だいたいこういう人は今の企業でも活躍しているはずで、だからこそ平日は仕事がバンバンに入っています。私はこういった場合を考え、平日に休み、土日に面接を固めてやっていました。実際面接をしてみると『他社は平日しかダメでしたが、マリモは土日に面接してくれるので本当にありがたい』と面接者から何度も聞きしました。私は、面接官はサービス業だと思っています。土日も平日も同じ24時間。振り返ることによって成果が大きく違うのなら、休日の交換によって早く面接を済ませて、他の時間に充てれば非常に有効な時間を確保できます。
たまに遠方からの応募者があり、来てもらうか、こちらから出張面接に行くかという問題が発生します。私が採用担当をしていた際はWEBが発達途中でしたので、行くか来てもらうかの選択になります。ずばり、行く方が、効果が出ます。これは一見無駄な時間に感じますが、応募者に複数内定が出たときに『来てもらった』と恩を感じます。心理学に返報性の法則というのがありますが、こうやって恩を感じて頂く事で同条件の他社内定が出たときに有効な意思決定の材料となります。例えば、あなたに『高度な技術者が1日で雇えるのでオーストラリアに1日だけ行ってください』と言われたら行きますか?時間に見合った成果が得られるのであれば、それは無駄な時間とは言えないと思います。
効率性を高めるには1人だけではなく、その周辺の面接をうまくスケジュール調整し一気に何人も面接すれば移動コストも1回分で済みます。何人も面接に来てもらい『交通費はでません』というより、多少移動コストをかけて相手にコストも時間も負担させない事で早く採用活動が終わります。
実際、私はこのやり方で1人で、年間50人以上の中途採用実績を出してきました。ちなみにこの時の応募に対しての合格率は8%前後ですから、誰でもよい採用をやっていたわけではありません。
以上、採用活動におけるコストの考え方、時間の考え方を私なりに述べてみました。
執筆者: 金口裕也(かなくち ゆうや)
株式会社マリモホールディングス 国際人事部 部長