金口裕也(かなくちゆうや)
外国人を採用するにあたり、その国の文化や習慣、宗教上の問題が付き纏う事は多いです。大の親日国家であるインドネシアは、日本への憧れは凄まじいものがあります。日本人に何かと波長が合うインドネシア人ですが、文化や風習は大きな違いがあります。特に宗教上の問題が多い為、初めてインドネシア人を採用する企業は戸惑いも多いです。今回のコラムはインドネシア人を採用するにあたり代表的な問題点とその解決方法の例を書いてみたいと思います。
インドネシアは多民族国家ですが、宗教についてはイスラム教を信仰している割合が8割以上になります。
大部分はこのイスラム教徒(ムスリム)であり、このしきたりが大きく仕事に影響する事があります。
①お祈り時間は1日5回、1回あたり10分程度必要
②お酒は飲んではならない
③豚肉は食べてはならない
④男性は金曜日の礼拝が重要
⑤ラマダン(日が昇っている時間は飲食禁止)の時期
宗教の影響もあって、インドネシア人は礼儀正しい面がある。
メッカに向かってお祈りを1日5回しなければなりません。日本人で言えば、私の祖母が毎日夕方に仏壇に向かいお経を唱えておりましたが、そんな頻度ではありません。このことから私も最初は何でこんなに毎日するのかと思っておりましたが、敬虔な人ほど、私生活もしっかりしているなあと感じます。安定感があります。
以下は、参考としてのお祈りの時間ですが、宗派によって違いがあったりします。
1回目.:4時30分 頃
2回目.:12時頃
3回目.:15時頃
4回目.:18時頃
5回目.:19時頃
仕事をするうえで、職種によって違いますが、よく問題になるのは15時。12時は昼休憩中に行えばよいのですが、15時は休憩時間でない企業も多いです。このような場合は、企業が便宜を図れればいいですが、日本人から『何であいつだけ特別扱いなの?』となってしまいます。
こんな時の打開策として、休憩時間、終業時間の変更という手があります。
労働基準法では労働時間の長さによって休憩時間の最低時間はありますが、取得回数や休憩時間の長さに制限はありません。
例えば、12時からの休憩を50分とし、15時に10分という休憩時間の変更するのも工夫ですし、その人だけ、18時10分に終業時間を定めるのも良いかもしれません。この場合、雇用契約にその旨を示し、周囲の理解を促せば、不公平もなくなります。
お祈りする場所は、神聖なところなので、決まりがある!と慎重に考える日本人がおられますが、実はそんなことはありません。彼らに聞くと、静かな場所で四方が壁に囲まれ、地面に敷物がしければ大丈夫だそうです。当社は、ちょうど静かな場所に会議室がありましたので、そこを順番に使っていました。多少の時間のズレは許されるようです。
ムスリムは宗教上、お酒は一切口にしてはいけません。なので上司が『よっし!飲みに行くか!』というと『私は行けません。』という回答が返ってくることもあります。これは私の経験ですが、日本人が『居酒屋でご飯食べるか!』と言うとあるインドネシア人は、日本人が居酒屋に行くときは必ずお酒を飲まないといけないと思っているインドネシア人がいました。
こういった経験を経て、私は『●●君はお酒を飲まなくていいから、居酒屋に行こう』と言っています。こうすれば、喜んでついてきてくれます。最近の日本人の若者はあまりお酒の席に参加しない傾向があるようですが、インドネシア人はみんなで集まってワイワイガヤガヤが大好きです。その代わりお祈り時間や帰宅時間は配慮しましょう。明日の早朝にもお祈りしなければなりませんから。
実は私が一番困ったのはこれです。普段、一緒に行動していると豚肉や豚肉のエキスを使っているものは多いです。私は中華料理が好きですが、インドネシア人と中華料理には殆ど行ったことはありません。餃子、ラーメン、チャーハン、麻婆豆腐、ホイコーローなど殆ど豚肉を使っています。なので、安全パイはうどん、寿司、ケンタッキーだったりしますが、その他の店はふらっと店に入ることが出来ません。事前調査が必要です。以前、あるインドネシア人の女の子がどうしてもラーメンを食べてみたいと言ったので、調べると全て鶏しか使用していないラーメン屋さんが岡山にありましたので、連れて行ったら半泣き状態で『おいしい!』と言って全部平らげました。たいした事ではありませんが、なぜか感動して私もすごく嬉しかったのを覚えています。
海鮮系であれば、ムスリムにとっては完全な安全パイ。安心して食べられます。
インドネシアでは金曜日の礼拝は、男性にとって非常に重要だそうです。金曜日の午後はわざわざモスクに行ってお祈りをするそうですが、日本で仕事をしていると毎週それは無理だろうとなります。その辺はインドネシア人も理解を示してくれます。たまには半日有給を使わせて行かせてあげると、彼らは非常に感謝してくれます。許せる範囲で配慮してあげるのも彼らの帰属意識を高める方法のひとつです。
インドネシアにラマダンの時期に行くと日中は食事に困ります。国中が日中は食事も水も飲まない為、飲食店が閉まっているのです。外国人の多い地域では、開いている店舗もありますが、こういった宗教の決まりがあるので、日本に来ても敬虔なムスリムは守っています。この時期は昼の食事などは誘わないようにしましょう。普段通り『ちょっと昼飯行ってくるは。』と一言かけていけばいいのです。彼らはある程度周囲には理解を示してくれます。逆に変に気を配られるのが心苦しくなるようです。
インドネシアの交差点はまるでバイクレースのスタートの瞬間です(笑)
執筆者: 金口裕也(かなくち ゆうや)
株式会社マリモホールディングス 国際人事部 部長